廃頽的はいたいてき)” の例文
そこには葉子自身が期待もしなかったような廃頽的はいたいてきな同時に神経質的なすごくも美しい一つの顔面が創造されていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
もっともこの中立地帯の産物はその地帯の両側にある二つの世界の住民から見るとあるいは廃頽的はいたいてきと見られあるいは不徹底とののしられるかもしれない。
映画雑感(Ⅶ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それどころか——朝から天候の悪かった所為せいもあろうが——もうなんとなく薄暗くさえなって来て、荒涼とした廃頽的はいたいてきなこの原が、暗澹あんたんたるとばりに覆われるのも
自殺 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
室町将軍の頃には、歌があっても廃頽的はいたいてきな室内のものだけだった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このような特殊な場合だけ考えると、実際世間で純粋な芸術が人倫に廃頽的はいたいてき効果を与えるといって攻撃する人たちのいう事も無理でないと思われて来る。
自画像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ヒロインが病院の病室を一つ一つ見回って愛人を捜す場面で、階下から聞こえて来る土人女の廃頽的はいたいてきな民謡も、この場の陰惨でしかもどこかつやけのある雰囲気ふんいきを濃厚にする。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ただ生理的にむしろ廃頽的はいたいてきな効果を与えるのみではないかという疑いがある。
映画雑感(Ⅲ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)