巴渦うず)” の例文
否、菓子がうまいばかりではなく、あのあたりには昔の江戸の空気が依然として巴渦うずを巻いているのがなつかしい。
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
川ならば瀬が常にかわるように都会の繁華の巴渦うずもまた絶えず変って行っているのである。そこに渦が巻いているかと思うと、いつの間にかそれが別な方へと行っている。
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
混雑また混雑、群衆また群衆、行く人送る人の心は皆そらになって、天井に響く物音が更に旅客の胸に反響した。悲哀かなしみ喜悦よろこびと好奇心とが停車場の到る処に巴渦うずを巻いていた。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
今でも賑かであるそのあたりを形容するのに余り相応ふさわしくないというのもあるかも知れないが、しかもそこにはもはやその昔の空気が巴渦うずを巻いていないことだけは確かであった。
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)