崖端がけはな)” の例文
夕闇ゆうやみの迫っている崖端がけはなの道には、人の影さえ見えなかった。瀕死ひんしの負傷者を見守る信一郎は、ヒシ/\と、身に迫る物凄ものすご寂寥せきりょうを感じた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
目黒の茶屋に俳句会を催して栗飯の腹をする楽、道灌山どうかんやまに武蔵野の広きを眺めて崖端がけはなの茶店に柿をかじる楽。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
崖端がけはなの垣根のところに、豚の毛がたくさん落ちているし、庭の隅に、豚を焼いたらしい石のカマドのようなものもある。ここで豚を飼って、密殺して食べていられたのとちがいますか」
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それは、右は山左は海の、狭い崖端がけはなを、蜈蚣むかでか何かのようにのたくって行く軽便鉄道である。それを考えると、彼は電車に乗ろうとした足を、思わず踏みとどめた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
まっさきに崖端がけはなへ行きついた警官が、海のほうを見ながら叫んだ。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)