山千禽やまちどり)” の例文
ただ目をさえぎるものは、この人馬に驚いて、金色こんじきの中をしきりにけちがう飛天の山千禽やまちどりだけだった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが——あまりよく似た音色ねいろでもあった。立慶河岸りっけいがしを流していたのを、川長の二階で聞いたあの音色。ほんとにソックリな節廻ふしまわし、曲もたしかに宗長流の山千禽やまちどり
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうした山千禽やまちどりの曲の叫びは、かれの目指す鳴門の海にもひびき剣山の世阿弥が夢にも通うであろう。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よしや、月夜の風邪かぜ、また新しい寒さを骨身にみてよび起こされても、かの女の好きな山千禽やまちどりの曲。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耳心じしんをすまして聞き惚れると、音色はまぎれもあらぬ宗長流、しらべはゆうべの山千禽やまちどりである。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
チチ、チチ、と山千禽やまちどりのさえずりが聞こえるから、もう夜は明けているのだろうが、世阿弥の側には、魚油をともした火皿ひざらの燈心が、今のかれの命のように、心細く燃え残っている。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
迦陵頻伽かりょうびんがの声ともきこえる山千禽やまちどりのチチとさえずるあした——根本中堂こんぽんちゅうどうのあたりから手をかざして、かすみの底の京洛みやこをながめると、そこには悠久ゆうきゅうとながれる加茂かもの一水が帯のように光っているだけで
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あ! ……あれは山千禽やまちどり! 山千禽……の曲」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山千禽やまちどり
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)