屍骸むくろ)” の例文
小谷間こたにあいの、いささか風雨を避けた地点ところに、白髪頭を土にり込まして、草加屋伊兵衛の血だらけの屍骸むくろが、仰向けに倒れていた。
こういう不思議な殺され方で大道へ屍骸むくろを晒らした者は班長ばかりではないのであった。先刻も云った通り政府筋の高位顕官が殺されたのみならず南方は広東でも民党の有力者が殺された。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
畫面の中央に、若い女が桜の幹へ身を倚せて、足下に累々とたおれて居る多くの男たちの屍骸むくろを見つめて居る。女の身辺を舞いつゝ凱歌かちどきをうたう小鳥の群、女の瞳に溢れたる抑え難き誇りと歓びの色。
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
水に酔つた私の屍骸むくろを救つてくれはしないであらう
お長屋頭へ駈け込んで人手を借りて壊れた壁土を剥いでみると、中から出て来たのは縮緬ぞっきの粋作り、小柄な男の屍骸むくろで、——首がなかった。