あた)” の例文
こんもり繁つた雑木林のなかから、田舎家の白壁が見えて、夕日が明るくそれにあたつてゐて、いかにも気持のだ。
縁側に出て庭の木犀もくせいあたる日を眺めていると、植木屋の裏の畠の方から寂しい蛙の鳴声が夢のように聞えて来る。祗園の祭も近づいた、と私は思った。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
其日A君が興奮した精神こゝろ状態ありさまにあることを私はその力のある話振で知つた。朝日が寒い山の陰へあたつて來た。A君は高い響けるやうな聲を出して笑つた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
熱い日があたって来た。三吉の家では、前の年と同じように、鴨居かもいから鴨居へ細引を渡した。お雪が生家さとから持って来たもので、この田舎では着る時の無いような着物が虫干する為に掛けられた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)