密々みつみつ)” の例文
「ほかならぬ将軍のこと。さもあらんと思っていたが、果たせるかな、密々みつみつみことのりまで賜わっておられたか。——ああ、時節到来」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いずれにせよ、そなたの御決心が、どのようなものか、密々みつみつ、拙者うけたまわりたい、その上にて御相談にも乗りたく——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そのうちに男はある女と文通したり、密々みつみつ会っていたりするのを知って、激しい嫉妬と憎悪の念に悩まされた。女は遂にエリスの家を探りあてた。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
キャラコさんは、ひとりでブツブツいいながら裏山をおりて川の岸までゆくと、すこしくい込んだ、沢のようになったところに、あさ緑の水草のようなものが密々みつみつと生えている。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
で、密々みつみつ手筈をし、待ち構えていると出て来ない。宗春だんだん兇暴になった。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
サンフランシスコを出帆しゅっぱんしてからかれらは、密々みつみつ悪い計画をこらした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それから四、五日ほど、何か二人で密々みつみつ策動していたようだったが、一夜忽然こつぜんと、宮門の兵をあらかた誘い出して、どこかへ移動してしまった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかし、それもごく密々みつみつに——本来江戸へは帰れぬ事情のあるこのほう、必ずとも他人ひとの耳には触れないようにな……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あいや。それ故にこそ、特に私が選ばれて、大将曹操から密々みつみつにお旨をうけて忍んで来たわけです」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、幾日かは家臣同志のあいだで密々みつみつ相談していたものであったが、当然、宗円の耳にも聞えてゆき、ついにある夜、一同が集まっている席へ、つと宗円が姿を見せて
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを密々みつみつ言上ごんじょういたしますれば、ちかきご合戦かっせんはご勝利うたがいもなきこととぞんじまする
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぜひ密々みつみつお目にかかりたいとの申し入れですが——何と計らったものでしょうか。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その密々みつみつな運動のために、過日来、若狭からこの金ヶ崎城下へ来て、幾たびとなく、太守たいしゅ義景よしかげにもまみえ、藩老の私邸へも訪れ、ほとんど、寝食も忘るるばかり、その成功に努めていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)