安治川あじがわ)” の例文
ふねの出帆は、それから一時間半の後——真夜中まよなかに馬関を発して、ここからはもうまっすぐに、大坂の安治川あじがわへ向かうという予定なのである。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安治川あじがわ口まで下って、汐合や風を見計って天保山沖へ乗出すのである。安治川を下る時両側の家で、川中へ釣瓶を落して水を汲んだり物を洗ったりする様を珍しく見た。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
かの安治川あじがわを切った人は実に日本にとって非常な功績をなした人であると思います。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
公使ロセスは書記官カションを同伴して、安治川あじがわの川岸からはしけに乗るところへ出た。仏国船将ピレックス、およびトワアルの両人もフランス兵をしたがえて京都まで同行するはずであった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その後、安治川あじがわ屋敷にとぐろを巻いていた天堂、お十夜、旅川の三名は、何らの急報を得てか、十数名の原士をひきつれ、ッとり刀で桃谷ももだにへ駈け向った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに、公使らの安治川あじがわ着を知らせる使者が走って来た。軍旗をたてた薩州兵の一隊を先頭に、護衛の外国兵はいずれも剣付き鉄砲を肩にして、すでに外人居留地を出発したとの注進がある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その船は、夜明け方には、もう大坂の安治川あじがわへはいっているだろう。——そしてそこから、誰か上陸あがって、信長の陣へ駈け込む。——堺の領民のほんとの総意を訴え出る。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卍丸は下屋敷の裏庭——安治川あじがわの横について、阿波守はすでに楼船ろうせんの屋形へしとねを移していた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)