おもいもの)” の例文
あしたよりゆうべに至るまで、腕車くるま地車じぐるまなど一輌もぎるはあらず。美しきおもいもの、富みたる寡婦やもめ、おとなしきわらわなど、夢おだやかに日を送りぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これよりして、私は、茶の煮えると言うもの、およそこのへんしるした雀の可愛さをここで話したのである。時々微笑ほほえんでは振向ふりむいて聞く。娘か、若い妻か、あるいはおもいものか。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(しかし、……やがて知事のおもいものになった事は前にちょっと申しました。)
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
北国ほっこくにおいても、旅館の設備においては、第一と世に知られたこの武生のうちでも、その随一の旅館の娘で、二十六の年に、その頃の近国の知事のおもいものになりました……めかけとこそ言え、情深なさけぶかく、やさしいのを
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
知事のおもいものとなって、家を出たのは、その秋だったのでありました。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)