妙子たえこ)” の例文
お姉様はご長男の照正てるまさ様とご次男の照常てるつね様のお次にあたる。妙子たえこ様といってお年は十六、女子学習院へ通っていられる。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「私の主人は香港ホンコンの日本領事だ。御嬢さんの名は妙子たえこさんとおっしゃる。私は遠藤という書生だが——どうだね? その御嬢さんはどこにいらっしゃる」
アグニの神 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
恥しいことだが、正直をいうと、僕は妙子たえこに惚れていた。惚れていたればこそ彼女の居る間は、あれ程も君を始め友人達が驚いていた程も、仕事に没頭出来たんだ。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
俺の旦那は此位えらい方だから家内うちゞうの方が揃つて悉皆みんな豪いや。別して感心なのは嬢様だ子。齢は十九の厄年で名は妙子たえこと仰しやる。君達に見せたいほどな好い御容貌ごきりやうだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「……妙子たえこっ、妙子っ。……どうしやったのじゃ。気をたしかにしてたもい」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鏡の中で、廊下からうしろへ這入はいって来た妙子たえこを見ると、自分でえりを塗りかけていた刷毛はけを渡して、其方そちらは見ずに、眼の前に映っている長襦袢ながじゅばん姿の、抜き衣紋えもんの顔を他人の顔のように見据みすえながら
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
妙子たえこ様が見るに見かねておっしゃったせつな、照彦様はもう組みついてきた。正三君もいまは仕方がない。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
とにかく西洋間さえあればいのです。その西洋間か、銀座通りか、音楽会かを第一回にするのですから。……しかし妙子たえこは——これは女主人公じょしゅじんこうの名前ですよ。
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
参拝者達に挨拶あいさつを返している家族や親戚旧知の人々の中に、一際ひときわ参拝者の注意をいたのは、最愛の妹に死別して涙も止めあえぬ川手妙子たえこさんの可憐な姿であった。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
東京の有名な大宝石商の玉村たまむら氏のお嬢さんで、妙子たえこさんという方だ。信州しんしゅうのある温泉場からの帰りみちを、お父さんの一行と分れて、一人のばあやを供に、数日ここに滞在しているのだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
妙子たえこ様はおどろいてせいした。しかし照彦てるひこ様はもうききわけがない。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
じっとみんなのお話をきいている、まだ幼稚園生の妹の妙子たえこちゃん。
智恵の一太郎 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)