大樽おおだる)” の例文
水は木戸から五丁も下の、僅かなき水を運びあげて使う。大樽おおだるに五つは常備してあるが、火事が大きくなればまにあわない。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
物置小屋の土間でなかやを相手に幾つもの大樽おおだるに漬けていた甲斐甲斐しい姿と、その赤くれた指のことが憶い起される。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
なかば茫然ぼうぜんとして腰かけていると、その部屋の主な家具をになっているジン酒かラム酒の大樽おおだるの上に、なんだか黒い物がじっとしているのに、とつぜん注意をひかれた。
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
かなう仕儀ならのどを鳴らして飛びつきたい WET 派のカラス天狗が、食慾不振のカラ腹を抱えて、十日二十日と沼のような大樽おおだるに揺れる勿体もったいぶった泡立ちの音を聴き
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
アニリン染料の真青な液が一ぱい大樽おおだるに入っているのを積んだトラックがハンドルを道悪に取られ、呀っという間に太い電柱にぶつかって電柱は折れ、トラックは転覆てんぷく
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
北山が塾を見廻ってそれを見附けて、徳利でも小さいのを愛すると、その人物が小さくおもわれるといった。天民がこれを聞いて大樽おおだるを塾に持って来たことがあるそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
葡萄酒ぶどうしゅを一パイント飲むのもけちけちする日があるかと思うと、それは、その翌日に牡牛おうしを一頭丸焼きにし、ビールの大樽おおだるの口をあけ、近所の人に一人残らずもてなしをするためなのだ。
いにしえの地獄のもやの中には、そういう大樽おおだるがどこかにある。