大桶おおおけ)” の例文
大桶おおおけに二年がかりで天水をとり溜め、魚は海水に漬けて空乾からほしにし、元文四年の春のはじめ頃に、いっさいの準備が完了した。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
亭主は例のフスマに芋、葱のうでたのを混ぜ、ツタを加えて掻廻し、それを大桶おおおけに入れて、馬小屋のかぎに掛けてった。馬はあまえて、朝飯欲しそうな顔付をした。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こいふなも、一処ひとところへ固まって、あわを立てて弱るので、台所の大桶おおおけみ込んだ井戸の水を、はるばるとこの洗面所へ送って、橋がかりの下をくぐらして、池へ流し込むのだそうであった。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水を張った大桶おおおけの底へ小石をしずめておいて、幼い小初にくわえ出さしたり、自分の背に小初を負うたまま隅田川の水の深瀬ふかせに沈み、そこで小初を放して独りで浮き上らせたり、とにかく
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)