夕照せきせう)” の例文
この駒ヶ嶽の絶巓に微かに消え行く夕照せきせうの光を望み見て、日夜にちや都門に向ひて志を馳せつゝある少年なきや。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
恰度ちやうど鶴飼橋へ差掛つた時、円い十四日の月がユラ/\と姫神山の上に昇つた。空は雲一片ひとつなく穏かに晴渡つて、紫深くくろずんだ岩手山が、歴然くつきり夕照せきせうの名残の中に浮んでゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
煙寺えんじ晩鐘ばんしよう漁村ぎよそん夕照せきせう、之を八景といつて得意の畫であつたといふのである。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
其傍では船頭のかみさんが、釜に米を入れたのを出して、川から水を汲んで、せつせとそれをいで居たが、やがて其処そこから細い紫のけぶりが絵のやうに川になびいた。夕照せきせうが赤く水を染めて居た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)