壟断ろうだん)” の例文
旧字:壟斷
空気と日光とを壟断ろうだんしてる広場の市に、あらゆる犠牲を覚悟しあらゆる汚行をしりぞける勇敢な魂の小団を、対立させることだった。
カペエがレコードに出現する前、レナーは全く弦楽四重奏曲の人気を壟断ろうだんした。ロンドン弦楽四重奏団などは問題でなかった。
藤原時代において上流社会の壟断ろうだんするところとなっておった文明に比べて、その典雅の度を減じて通俗になり、卑近になり
維新後、天下の大勢を牛耳って、新政府の政治と、新興日本の利権とを併せて壟断ろうだんしようと試みた者は、所謂、薩長土肥の藩閥諸公であった。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
日本の封建領主は幕府も藩主も関税の利益を壟断ろうだんするかあるいは自ら貿易企業者の資格を帯びることによって利益した。
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
硯友社はこの全体の力で常に文壇にあたったから、一時硯友社はあたかも政友会が政界に跋扈ばっこしたように文壇を壟断ろうだんして
「そんならある意味で小作人をあざむいて利益を壟断ろうだんしている地主というものはあれはどの階級に属するのでしょう」
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
都留の心にはいつかそういう疑いがきざしはじめた。——二十年にわたって藩政を壟断ろうだんし私曲をほしいままにした人だろうか。
晩秋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
すなわち地方豪族が開墾の利益を壟断ろうだんした八幡太郎の頃になると、遺産相続の問題もこれに加わって、いよいよもって一家に属する個々の住宅が殖え
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
我々の生存に必要な政治上の権利を官僚と官僚の変形である既成政党との久しく壟断ろうだんするのに放任して置いて
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
十六人の女たちは、時々彼を奪い合って、互に嬌嗔きょうしんを帯びた声を立てた。が、大抵は大気都姫が、妹たちの怒には頓着なく、酒にひたった彼を壟断ろうだんしていた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
南禅寺なんぜんじを一見して黒谷くろだにまで歩いた。あの山門に匿れていたという縁故で途中の話題は石川五右衛門が壟断ろうだんした。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
正義を基礎とする唯一のものたる民主国においても、時として一部が権力を壟断ろうだんすることがある。その時全部が崛起くっきし、権利回復の必要上武器を取るに至る。
それ故に資本家階級なればとて、勝手に私利を壟断ろうだんして下層民をしいたげる事は出来ぬ訳で、両々相調和し親昵しんじつし行くところに、初めて平和を楽しむ事が出来るんである。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
(政治家になろう。そして、政治が悪漢どもの手によって、壟断ろうだんされる罪悪を、一掃したい)
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
かうした藤原氏の政権壟断ろうだんは、やがて平清盛の模倣するところとなり、ひいては、源頼朝の幕府思想の萌芽となつたのではあるまいか。その点に於て、藤原氏罪有りと思はれる。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ところが、これらの長吏のともがらは、多くは自分の勢力にまかせて、その縄張り内にできた死牛馬を独占して、皮革その他の利益を壟断ろうだんし、他の落伍者仲間には触らせないようにしました。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
見よかの問屋なるものは政府と特別の条約を結び、その冥加金みょうがきんなるものを上納し、その株式なるものを得、もって公開競争の道を絶ち、もってその専門商業の利益を壟断ろうだんしたるにあらずや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
紫衣褫奪しいちだつ事件にひそむ幕府の真意は、朝権ちょうけんを否定して、あらゆる政治的威力を、おのが掌中に壟断ろうだんせんとするに在った。沢庵の流罪は、この意味で公武抗争のひとつの犠牲だったわけである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其れが、其有無の融通を妨害し、供給を壟断ろうだんする為に行はれる。暴力の横行を防禦して人民の自由、平安を保護せんが為に設けられたる警察は、自ら暴力を用ゐて人民の平和的自由を妨圧する。
土民生活 (新字旧仮名) / 石川三四郎(著)
壟断ろうだん」、「代価の低廉」、「収入額」などという言葉ばかりだった。
近代の憲法は、表向きは何といっても、実際のところは従来政権を壟断ろうだんしておったいわば特権階級とでもいうべきものに対する、民権思想の多年の奮闘の結果として現われたものたる事は疑いはない。
亜米利加アメリカでは大資本家が小資本家を吸収して利益を壟断ろうだんすると云つてトラストのへいを頻りに論じてるが日本では先づ当分トラストが行はれるほど進歩しない。
青年実業家 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
菅笠の座からの運上を壟断ろうだんしたように、三条西家は苧の売買からして課役をとる権利を有しておったので、必ずしもある一国に限った収入でなかったのかも知れぬ。
これに憤慨して起った地方的勢力も、一度時を得て都に入ると、すぐに堕落してブル政治を施し、ブル生活を壟断ろうだんして、自分の一族一派以外のものを賤民扱いにした。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
荘園の名の下に天下の田園を壟断ろうだんして、国政を顧みず、上に見習う地方官は誅求を事として、私腹を肥すことのみに汲々とし、下積みになった平民は口分田の班給にもあずかることをえず
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
私に限らず、すべて下積みは此方から咫尺しせきして真価を認めて貰う機会がない。それは課長級の壟断ろうだんするところとなっている。この故に彼等はドン/\出世する。此方はいつまでも取り残される。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それは百五十万乃至三百万人の有産階級のみが特権的に壟断ろうだんする政治であって、国民全体の政治とは如何にしてもいわれないのです。代議政治の美名をせんした財閥的専制政治と呼ぶのが至当です。
婦人も参政権を要求す (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
実に新主義の向かうところ敵なく欧州全体を風靡ふうびし、山となく河となく、草も木もその威に従わざるはなく、いかなる頑固の帝王宰相も、いかなる壟断ろうだんを私するの姦商かんしょうも、いかなる惑溺的わくできてきの政略も
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「第一条から第八条まで、江戸家老以下の政治壟断ろうだん、私曲秕政ひせい、収賄涜職とくしょくの事実が挙げてある、これを明日、おまえが御前で読みあげ、記してある重職五名それぞれ永蟄居えいちっきょ、閉門、追放を申渡すのだ」
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
利益があれば勢力者がこれを壟断ろうだんするのは珍しくない。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
内地雑居となった暁は向う三軒両隣が尽く欧米人となって土地を奪われ商工業を壟断ろうだんせられ、総ての日本人は欧米人の被傭者、借地人、借家人、小作人、下男