地口じぐち)” の例文
しかし、いつどこから洩れたものか、何事も茶にしてすまそうとする江戸っ子気質、古本江戸異物牒に左の地口じぐちが散見している。
文学にしても枕詞やかけ言葉を喜ぶような時代は過ぎている。地口じぐち駄洒落だじゃれは床屋以下に流通している時代ではあるまいか。
むやみに縁語を入れたがる歌よみはむやみに地口じぐち駄洒落だじゃれを並べたがる半可通はんかつうと同じく御当人は大得意なれどもはたより見れば品の悪きことおびただしく候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
まくらの「道灌」ばかりやっていたため〽道灌(瓢箪)ばかりが売り物(浮きもの)か——なる地口じぐちができたという故人某の思い出とともに結構でした。
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)
見ると綺麗に飾られた庭の片隅の稲荷のほこらから裏の木戸口まで一間置き位に地口じぐち行燈あんどんならび、接待の甘酒だのおでんだの汁粉だのゝ屋台が処々に設けられて
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自然その掛言葉から来る滑稽趣味、地口じぐちともいうべき一種の駄洒落が句の生命を為していたのであった。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
少年は、そのような異様の風態で、割烹店へ行き、泉鏡花氏の小説で習い覚えた地口じぐちを、一生懸命に、何度も繰りかえして言っていました。女など眼中になかったのです。
おしゃれ童子 (新字新仮名) / 太宰治(著)
僕はすぐこの動物の絵を、地口じぐちの署名か、象形文字の署名、といったようなものだと見なしたんだ。署名だというわけは、皮紙ヴェラムの上にあるその位置がいかにもそう思わせたからなんだよ。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
てらまへて酒のませんともみぢ地口じぐちまじりの顔のゆうばへ
むやみに縁語を入れたがる歌よみは、むやみに地口じぐち駄洒落だじゃれを並べたがる半可通はんかつうと同じく、御当人は大得意なれどもはたより見れば品の悪き事おびただしく候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
南条より横にはいれば村社の祭礼なりとて家ごとに行燈あんどんを掛け発句ほっく地口じぐちなど様々に書き散らす。
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)