囚徒しゅうと)” の例文
つまりお蝶は、ころびばてれんを父とし囚徒しゅうとの後家を母として、その仲に生れながらの宿命をもって美しい娘と育ちました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしは、十ねん、二十ねん牢獄ろうごくにあった囚徒しゅうとが、放免ほうめんされたあかつき日光にっこうのさんさんとしてみなぎる街上がいじょうへ、されたときのことを想像そうぞうしたのであります。
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
俊寛 (ため息をつく)あゝ、あなたは囚徒しゅうとのごとく不安な態度で仏の名を呼ばれます。このたいせつなあかしをたてるのにわしの顔をも見ないで——あゝ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
地震の時に、多分そのことは新聞でご承知でありましょうが、あの刑務所では、危急の場合の非常手段で、いったん囚徒しゅうとを解放したのでございます。私も解放された一人でございました。
秘密 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
されば何事も自己の愛憎あいぞうに走りて囚徒しゅうとを取り扱うの道を知らず。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ことに、お蝶の母親が、淫奔いんぽん囚徒しゅうとの後家さんであったことも、今となって、二官に慄然りつぜんとする因果を想わせて来ます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)