くちばし)” の例文
嫂はそれを抱いて膝の上に置いて撫でさすった。暫くして鸚鵡はやっと正気づいて来た。そこでくちばしで翼をつくろって飛びあがり、室の中をまわっていった。
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
これは大悟を雛にたとへ、一羽の雛の生まれる為には卵の中の雛のくちばしと卵の外の親鳥の啄と同時に殻を破らなければならぬと言ふことを教へたものであります。
文芸鑑賞講座 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
廟の傍の林には数百の鴉が棲んでいて、その前を往来する舟を数里のさきまで迎えに往って、舟の上に群がり飛ぶので、舟から肉を投げてやると一いちくちばしでうけて、下におとすようなことはなかった。
竹青 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
成は大喜びで、少年と二人で見ていると、一羽の鶏が不意に来て、いきなりくちばしでそれをつっつこうとした。成はびっくりして叫んだ。幸に啄は虫にあたらなかった。虫は一尺あまりも飛んで逃げた。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)