かじ)” の例文
「でも、豊世——伊東で寂しい思をしながら御馳走ごちそうを食べるよりかも、ここでお前と一緒にパンでもかじる方が、どんなにか私は安気なよ」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小「これは有難う、歩くと喉が渇くからたもとへ入れてかじりながらきます、この風呂敷は大きいから大丈夫、宜うございます」
やがて落葉を踏む音して、お杉ばばあ諷然ひょうぜんと帰って来た。男は黙って鳥をかじっていた。二人共に暫時しばしは何のことばをも交さなかったが、お杉の方からしずかに口を切った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
先ずこの右側を廻り、次に左側に向って大嶂壁の下を通り抜ける、今度は「廻れ右」して、この嶂壁の中間にある幾条かの割目を探り、岩角にかじりついて登るのだ。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
こゝでさつきのアンパンをかじりながら、二時間の間辛抱してみよう、そのうちにリヽーが出て来てくれたら、お土産のかしわの肉を与へて、久しぶりに肩へ飛び着かせたり、口の端を舐めさせたり
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お杉は依然やはり笑って答えず、腰にぶら下げた皮袋から山毛欅ぶなの実を把出とりだして、生のままで悠々とかじり初めた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
田舎ではございますが追々ひらけてまいり、三味線などをポツリ/\とかじる生意気も出来て来たは丁度幸いと、伊之助は師匠をはじめ、お若は賃仕事などいたし、細々ながら暮している。
こゝでさつきのアンパンをかじりながら、二時間の間辛抱してみよう、そのうちにリヽーが出て来てくれたら、お土産のかしわの肉を与へて、久しぶりに肩へ飛び着かせたり、口の端を舐めさせたり
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その何かを鼠にかじられでもしてはならないと思い付いて、かれは煙管きせるを手に持ったままで蚊帳の外へくぐって出ると、物の触れ合うような小さい響きはまだまなかった。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
五「相談だって手前てめえは二十四五にも成りやアがって、ぶら/\あすんでて、親のすねばかりかじっていやアがる、親の脛を咬っている内は親の自由だ、手前の勝手に気にった女が貰えるか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ここでさっきのアンパンをかじりながら、二時間の間辛抱してみよう、そのうちにリリーが出て来てくれたら、お土産のかしわの肉を与えて、久しぶりに肩へ飛び着かせたり、口の端をめさせたり
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一町ばかりを引っ返して、半七は小さな蕎麦屋の暖簾のれんをくぐると、徳寿は頭巾の雪をはたきながら、古びた角火鉢へ寒そうにかじり付いた。半七は種物たねものと酒を一本あつらえた。
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しひょっとどんな虫がかじりついたか知れねえと思ったからよ、ナニ旦那がいらっしゃるまでもねえ私が見届けてめえりますから……来て見ればこれだからね実にびっくりしたじゃねえか、エ
熟した椰子の実をもぎ取ってかじろうとするが、皮が硬くて歯が立たないので、癇癪を起こしてほうり出して、さらにほかの実を取って咬ってみると、これもやはり硬いのでまたほうり出すのを
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)