同棲者どうせいしゃ)” の例文
その同棲者どうせいしゃが無遠慮にも、行い、かつ主張せんとするようになって、そこにこの不思議なる夫婦は最初の、そして最終の夫婦喧嘩を始めたのである。
夫婦ではあっても、世間に対しては単なる同棲者どうせいしゃしくは許婚いいなずけと云う風に取って貰いたいので、そう呼ばれなければナオミは機嫌が悪かったのです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
老婆の唯一の同棲者どうせいしゃたる妹リザヴェータが家にいない、したがって、老婆は晩の正七時には必ず一人きり家に残るということを、思いもよらず聞き込んだのである。
ねこをもらって来たから見に来いというのである。行って見るともうかなり生長した三毛猫である。おおぜいが車座になってこの新しい同棲者どうせいしゃの一挙一動を好奇心に満たされて環視しているのであった。
ねずみと猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それに刑事の話だと、その支那人の混血児らしく見える婦人は正式の細君ではなくて、仮初かりそめ同棲者どうせいしゃらしいのだと云うことであった。そして彼女の国籍が又明瞭めいりょうを欠いていた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)