可憫あはれ)” の例文
逸りきつたる若き男の間違仕出して可憫あはれや清吉は自己おのれの世を狭め、わが身は大切だいじ所天をつとをまで憎うてならぬのつそりに謝罪らするやうなり行きしは
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
奉公大事ゆゑにうらみを結びて、憂き目にひし貫一は、夫のわざはひを転じて身のあだとせし可憫あはれさを、日頃の手柄に増して浸々しみじみ難有ありがたく、かれをおもひ、これを思ひて、したたかに心弱くのみ成行くほどに
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此様に撲つてなしたる鋭次のむごさが恨めしきまで可憫あはれなるさまなれど、済んだ事の是非も無く、座に戻つて鋭次に対ひ、我夫うちでは必ず清吉が余計な手出しに腹を立ち
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)