古渡こわたり)” の例文
信秀死する三年前に古渡こわたり城で元服して幼名吉法師を改めた三郎信長は、ただちに父の跡を継いで上総介と号した。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と観山氏が腹の底から絞り出すやうに感心すると、執事はそれを引手繰ひつたくるやうに取り上げて、またちがつた古渡こわたりの織物を大幅のまゝ次から次へと取り出して来たさうだ。
「サア、親分、神輿みこしを上げて下さいよ、今度こそ本当の大変、——古渡こわたりりの大変ッ」
古渡こわたりすゞ真鍮象眼しんちゅうぞうがん茶托ちゃたくに、古染付ふるそめつけの結構な茶碗が五人前ありまして、朱泥しゅでい急須きゅうすに今茶を入れて呑もうと云うので、南部の万筋まんすじ小袖こそで白縮緬しろちりめん兵子帯へこおびを締め、本八反ほんはったん書生羽織しょせいばおり
南方外国や支那から、おもしろい器物を取寄せたり、また古渡こわたりの物、在来の物をも珍重したりして、おもしろい、味のあるものをおおいたっとんだ。骨董は非常のいきおいをもって世に尊重され出した。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「サア、大變。親分、今度こそ本當の大變だ、古渡こわたりの大變で掛け値なしの大變」
わしの見たところに間違がなければ、あれは立派な古渡こわたりじゃ。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
「懷ろ手を拔く隙もないんですよ、今日のは古渡こわたりの大變で、——金助町の浪人の娘——あのお茂世といふのが、死骸になつて庭の眞ん中に投り出されてあつたとしたら、親分だつて驚くでせう」