取組とっく)” の例文
先生、もう一つの卓子テエブルを引立って、猪と取組とっくむようにいきおいよく持って出ると、お道さんはわけも知らないなりに、椅子を取って手伝いながら
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
金三はあごをしゃくいながら、桑畑のくろへ飛び出した。良平もべそをかいたなり、やむを得ずそこへ出て行った。二人はたちまち取組とっくみ合いを始めた。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
心持がうございますぜ、とさかを立ってずっとして、まなこをくるりと遣りますとね、私とでも取組とっくみそうでさ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
地女じおんなを振りも返らぬ一盛ひとさかり。)そいつは金子かねを使ったでしょうが、こっちは素寒貧すかんぴんで志を女郎に立てて、投げられようが、振られようが、赭熊しゃぐま取組とっく山童やまわろの勢いですから
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勿論、年増だが、別嬪べっぴんだから取組とっくんでも可い了簡りょうけんかも知れません……従妹め、怒ったの怒らないの、それぎり出て来ない。……音信不通同様で——去年急病で亡くなりました。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)