半程なかほど)” の例文
坂の半程なかほどに、オランダ渡りと云った風で、お月様の顔を覗かせる、遠眼鏡とおめがね屋が商売をしていた。安物の天体望遠鏡を据えて一覗き十銭で客を呼んでいるのだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
其処はもう玉の井の盛場を斜に貫く繁華な横町の半程なかほどで、ごたごた建て連った商店の間の路地口には「ぬけられます」とか、「安全通路」とか、「京成バス近道」とか
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
行き行きて車はこの小路の尽頭はづれを北に折れ、やや広きとほりでしを、わづかに走りて又西にり、その南側の半程なかほど箕輪みのわしるしたる軒燈のきラムプを掲げて、剡竹そぎだけを飾れる門構もんがまへの内に挽入ひきいれたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
考え考えその道の半程なかほどまで歩いた時、彼はふとある恐ろしい考えに襲われて、ギョッと立ち止ってしまった。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
佳子は、手紙の半程なかほどまで読んだ時、すでに恐しい予感の為に、まっ青になって了った。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)