千木ちぎ)” の例文
しかし千木ちぎのある建物の、その門口まで走りついた時には、わたしも国臣様も「あッ」と叫び、思わず足を止めてしまいました。
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
足名椎は彼等夫婦の為に、出雲いづもの須賀へ八広殿やひろどのを建てた。宮は千木ちぎ天雲あまぐもに隠れる程大きな建築であつた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
卑弥呼は藁戸の下へ蹲踞うずくまると、ひとりすずなを引いては投げ引いては投げた。月は高倉の千木ちぎを浮かべて現れた。森の柏の静まった葉波は一斉に濡れた銀のうろこのように輝き出した。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
地のした石根いわねに宮柱を壯大そうだいに立て、天上に千木ちぎを高く上げて宮殿を御造營遊ばされました。
あの高い森の上に、千木ちぎのお屋根が拝される……ここの鎮守様の思召しに相違ない。——五月雨さみだれ徒然つれづれに、踊を見よう。——さあ、その気で、あらためて、ここで真面目まじめに踊り直そう。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老僧の寺は十丁ほど東にあつて、私の家から其の天臺にかたどつたといふ二重屋根の甍がよく見えるし、老僧の庫裡くりの窓から、私の方のお宮の杉木立や、檜皮葺ひはだぶきの屋根や、棟の千木ちぎまでが見えたりした。
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ふもとの端山の千木ちぎたかしる家へ山の祖神の翁は岳神を訪ねた。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あたかも古城のそれのように、千木ちぎ勝男木かつおぎが立ててある。そうして屋根は妻入式つまいりしきであり、邸の四方に廻縁かいえんのある様子は、神明造りを想わせる。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
でもそのうちの一棟が、とりわけ高く他の棟からぬきんで、しかもその屋根に千木ちぎを立て、やしろめいた造りに出来ているのが、不思議に思われてなりませんでした。
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
千木ちぎの立ててある建物から——建物の二階の雨戸から、綺麗な上品な手が出ましたので……」
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何という古風な社だろう! その様式は神明造しんめいづくり千木ちぎが左右に付いている。正面中央に階段がある。その階段を蔽うようにして、檜皮葺ひはだぶき家根やねが下っている。すなわち平入ひらいりの様式である。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)