勤先つとめさき)” の例文
比田のいうところを黙って聴いていると、彼が変な女をその勤先つとめさきの近所に囲っているといううわさはまるでうそのようであった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ある時は、自動車を、池内光太郎の勤先つとめさきの会社の玄関へ横づけにして、驚く池内を誘って宮城前きゅうじょうまえの広場から、上野公園を一順して見せたこともあった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
重吉が種子の遺産として譲受ゆずりうけた五千円の貯金はその時なくなってしまう。つづいて勤先つとめさきの会社が突然解散せられる。種子が形見の貴金属類は内々ないないでとうの昔売りとばされた後である。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
勤先つとめさきの新聞社にいたのだし、槌野君は、朝から、二階借りをしている部屋に座りつづけて、一度も外出しなかったと云うし、園田文学士は大学の心理学実験室で、ある実験に没頭していたと云うし
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)