切歯扼腕せっしやくわん)” の例文
しかし当時の人、みなひそかに、切歯扼腕せっしやくわん、ときの朝臣と為政者の腐敗堕落を怒らざるはなかった。——我もとよりよく汝を知る。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人相書は全市の与力よりきおかきにいきわたり、別動隊として、近江之介を殺された上自分は閉門をうけて、切歯扼腕せっしやくわんに耐えない脇坂山城守の手から
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「浅川は、司令部の御命令で、昨夜は、立川飛行聯隊の宿舎に閉じこめられ、切歯扼腕せっしやくわんしていました。この上は、早く敵機に、めぐり逢いたいであります」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今更のように切歯扼腕せっしやくわんしているような次第で……私共も一度はドンで年貢を納めさせられた前科者ナッポンサラミンばかりですが、今日の御演説を承りまして初めて眼が醒めました。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
このアフガニスタンでのヘンダスンの劇的活躍こそは、ドイツ特務機関をして切歯扼腕せっしやくわんさせたもので、この事件があってから、ヘンダスンの身辺はたびたび危険を伝えられた。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
三河みかわ長篠ながしののおとら狐に至っては、近世その暴虐ことに甚だしく住民はことごとく切歯扼腕せっしやくわんしているのだが、人にくときは必ず鳶巣城とびのすじょうの故事を談じ、なお進んでは山本勘助の智謀
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「だから、自分らもこれではならぬと切歯扼腕せっしやくわんしているのです」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
むなしく切歯扼腕せっしやくわんするより他はありませんでした。
塵埃は語る (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
彼は、切歯扼腕せっしやくわん歯噛はがみをして口惜しがったのだ。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
さなきだに曹操が魏王を称して、天子にひとしい車服儀仗を用いるを眺めて、切歯扼腕せっしやくわんしていた一派のともがら
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帆村は文字どおり切歯扼腕せっしやくわんした。もうこうなっては、残念ながら人間の足では競争が出来ない。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おどろいたのは当然としても、もう少しそこになんとか気のきいた応急策のほどこしようがあったはずだと、刑事連をはじめ公衆は切歯扼腕せっしやくわんして口惜しがったが、やがでその忿懣ふんまんは非難に変わって
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
依然、主戦論者の声が、圧倒的であり、以後の秀吉の行動にたいし、切歯扼腕せっしやくわんする中で、ひとり苦々にがにがと、無口でいたのは、かの石川数正ぐらいなものだった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帆村は切歯扼腕せっしやくわんして口惜しがった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うわさを聞いて、彼らは切歯扼腕せっしやくわんした。石田佐吉、加藤孫六、同じく虎之助、片桐助作など
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「かつて父を漢中に討たれた夏侯淵の子ら四人が、常に父を蜀のためにうしなった恨みをんで切歯扼腕せっしやくわんしております。ねがわくは、今度のいくさに、その遺子四人を伴って行きたいと思いますが」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、直義が切歯扼腕せっしやくわんしたのもむりでない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)