しあわせ)” の例文
通り魔か? 通りすぎた気配だけあって、姿のない怪人! 生命の満足に残ったのが虎松にとって大きなしあわせだったといえる。
くろがね天狗 (新字新仮名) / 海野十三(著)
箱根を越えないうちにソコソコと荷物を片付けて、前部の車へ引移ってしまったので、翁は悠々と足を伸ばした。世の中は何がしあわせになるかわからない。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お互い物の道理の分る御慈悲深い御領主様を戴いて、しあわせでおじゃりまするな。そろそろ参りましょうわい
しあわせにも、上野介の立場は、受け身にあったし、島津だの酒井だのという大藩とも親戚の関係にあるので、裏面からの策も功を奏して、此方こっち側は「おかまいなし」と云う決着にはなったが
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
結局一人になった方がしあわせかもしれない。しかし、倖なんておよそおかしなものである。腹の減ったときに蜃気楼しんきろうを見るようなもので、なんの足しになるものかと思った。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
「それがあの、本当ならしあわせでござりますなれど……わたくし、あの只一つ——」
「あい。末々までもと申すのではござりませぬ。御出家姿となって最初の夜のお情をうけたら、邪気じゃきが払われて必ずともにしあわせが参るとこのように修験者共が申しましたゆえ、本当にもし——」
「そういうが、君は男でしあわせさ」
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)