仔犬こいぬ)” の例文
によって来た馬追虫うまおいもいる、こおろぎもいる、おけらもいるという騒ぎに、仔犬こいぬもはしゃいで玄関から上ってくれば、飼猫かいねこも出て来た。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
私は少年の頃白毛しろげ仔犬こいぬを飼つた事があつた。仔犬は閑さへあれば近所の犬と咬み合ひをしたが、いつも負かされがちだつた。
とらのとし生れだ。よすぎる男を思って苦労している。薔薇ばらの花が好きだ。君の家の犬は、仔犬こいぬを産んだ。仔犬の数は六。ことごとく当ったのである。
逆行 (新字新仮名) / 太宰治(著)
例の細かいホックの先で、その幹のごつごつした肌をさわってみ、生れたばかりの仔犬こいぬのような小さな頭を振りたてながら、やがて決心してじ登り始める。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
そのとき苅田壮平が、捨てられた仔犬こいぬが去ってゆく主人のうしろ姿を見るような眼で、じっとこちらを見あげていたのを、功兵衛は認めた。なさけないな、と彼は思った。
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
誰とでもじゃれて遊びたい仔犬こいぬのように、さっきから身体中に弾力の渦巻を転々さして、興味の眼を八方に向け放っていたむす子は、そういって、おかしさに堪え兼ねるように肩をふるわして笑った。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
途中まで来ると、仔犬こいぬを十一匹つれた犬さんに会ひました。
お猫さん (新字旧仮名) / 村山籌子古川アヤ(著)
「驚くべき可愛い人」であり「母ちゃん」であり「わが良き少女」であり「わが魂の搾取者さくしゅしゃ」であり「愛する女優さん」であり「可愛い仔犬こいぬ」であり「わが事務的で積極的な奥さん」であり……同時にその一切であり