二荒山ふたらさん)” の例文
今を去る千百余年、延暦えんりゃく三年二荒山ふたらさんの山腹において、かつらの大樹を見つけ、それを、立ち木のままに千手大士の尊像にきざまれたが——
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
以前は橋を渡らずに二荒山ふたらさん神社の方へ湖畔に沿うて行つて、そこらに點在する旅館に泊つたものであるが、われ等は歌が濱の米屋といふに着いた。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
帝展以外の方面もひっくるめてやっと思い出しのが龍子りゅうしの「二荒山ふたらさんの絵巻」、誰かの「竹取物語」、百穂ひゃくすいの二、三の作、麦僊ばくせんの「湯女ゆな」などがある。
帝展を見ざるの記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
再び顧みて二荒山ふたらさんを望めば、雲は既に半天に漲り渡りて、その罅隙の處、纔に男體山の圓き巓を認め得るのみ。
日光山の奥 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
上野の国の迦葉山かしょうざん、下野の国の二荒山ふたらさん、山城の醍醐だいごみね、河内の杵長しなが山、そして、なかでもこの高野山にすんでいるということは、大師のお詠みになった詩偈しげにもあって
永井平馬の一子いっし平太郎が、永井和泉守相続人として、明日は将軍御目見という時、三年前神隠しに逢って野州二荒山ふたらさんの奥にいたという和泉守一子鉄三郎が江戸に立還たちかえり、改めて家督相続を願い出で
さよう——だが、お話の開山上人の薬師仏は、二荒山ふたらさんかつらの大樹を、立ち木ながらに手刻しゅこくしたものではござらぬ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)