両班ヤンパン)” の例文
その宰相の家には宣揚せんようと云うひとの秀才があったが、それが十八歳になると父の宰相は、同族の両班ヤンパンの家から一人の女を見つけて来てそれを我が児の嫁にした。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
今さら、朝鮮あたりの娘のことをここに引き合いに出すのもすこし突然ではあるが、両班ヤンパンという階級の娘の嫁に行く夜を見たという人の話にはこんなことがある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
趙の父親は元来昔からの家柄の紳士で、韓国時代には相当な官吏をしていたものらしい。そうして、職を辞した今も、いわゆる両班ヤンパンで、その経済的に豊かなことは息子の服装からでも分った。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
夫人の実父の老両班ヤンパンは、いきなり腰の刀を抜いて夫人の咽喉元のどもとを刺した。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
風俗も異なり習慣も異なる朝鮮の両班ヤンパンと、木曾のふるい本陣とは一緒にはならないが、しかし青山の家でもやはりその「見るな」で、娘お粂に白無垢しろむくをまとわせ、白の綿帽子をかぶらせることにして
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)