不明瞭ふめいりょう)” の例文
元来きわめて不明瞭ふめいりょうな「摩擦」そのものの本性に関する諸問題に意外な曙光しょこうをもたらすようなことにならないとも限らない。
日常身辺の物理的諸問題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
隆夫は、その録音した受信機をもとにして不明瞭ふめいりょうな音声をなんとか分析して、その言葉の意味を読みとるつもりだった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分の不明瞭ふめいりょうな意識を、自分の明瞭な意識に訴えて、同時に回顧しようとするのは、ジェームスの云った通り、暗闇を検査する為に蝋燭ろうそくともしたり
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一郎への助太刀のように、一同のうしろから、不明瞭ふめいりょうなしゃがれ声が聞こえてきた。そこの椅子いすに、からだを二つに折ったようにして腰かけている祖母の声であった。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
向うの宵色の景色が復一の意識なのか不明瞭ふめいりょうとなり、不明瞭のままに、よどみ定まって、そこには何でも自由に望みのものが生れそうな力をはらんだ楽しい気分が充ちて来た。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そのうち思想が段々不明瞭ふめいりょうになって来た。昼間の明るい意識から次第に灰色の夢の薄明りに這入はいって行く。昔の記念が浮ぶ。楽しかった時代の昼の事、夜の事が思い出される。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
(発音不明瞭ふめいりょうではあるが、今暁発病の直後よりはややき取れるようになった気がする)
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼はただとぎれとぎれに、不明瞭ふめいりょうな音を発することができたばかりである。
その言い方が不明瞭ふめいりょうだったので警官は敏活にこれを聞きとがめた。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
高熱のために貞世の意識はだんだん不明瞭ふめいりょうになって来ていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
頭脳の不明瞭ふめいりょうな所から、実は利己本位の立場に居りながら、自らは固く人の為と信じて、泣いたり、感じたり、激したり、して、その結果遂に相手を
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なぜか理由はわからないが、さっきはあれほど不明瞭ふめいりょうだった音声が、目のさめたときから急に明瞭になったらしい。またその音声もずっと大きくなった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
将来の進展に期待したい。ただし、このトーキー器械の科学的機構は未完成である。言語が聞き取れないために簡潔な筋のはこびが不明瞭ふめいりょうになる場所のあるのは惜しい。
映画雑感(Ⅲ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
身体からだが動かないから、心も働かないのか、心が居坐りだから、身体が怠けるのか、とにかく、双方あいび合って、生死せいしの間に彷徨ほうこうしていたと見えて、しばらくは万事が不明瞭ふめいりょうであった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もうすこし不明瞭ふめいりょうなのでは「かえるやら山陰伝う四十から」の次に「むねをからげる」があり、「だだくさ」の次に「いただく」があり、「いさぎよき」の次に「よき社」がありするのも同様である。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
陰気いんきな、不明瞭ふめいりょうなことばが、その怪影かいえいの口から発せられた。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのうち舌が段々もつれて来た。何かいい出してもしり不明瞭ふめいりょうおわるために、要領を得ないでしまう事が多くあった。そのくせ話し始める時は、危篤の病人とは思われないほど、強い声を出した。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)