うずくま)” の例文
先に戸口のところにうずくまって風を避けた二人の者は、まだ居たのかもしれないが、しかしもう私には見えなかった。
乾からびた葡萄棚の下にうずくまったとき、ロハ台に寝ていた男がムクムクと起きあがって、帆村に剣突けんつくをくわせた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
するとその帰途を待っていたもののように、二名の侍が道ばたにうずくまっていた。見ると、黒田家から来ている松千代の傅役もりやく井口兵助と大野九郎左衛門であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堀は朝になると裏門の庭草の茂りのかげにうずくまって、やさしい足音を待っていた。その時刻には黒い日傘をさした内儀が、ときには浅草草履を引っかけて、しんと、音もない裏町をやってくるのである。
(新字新仮名) / 室生犀星(著)
楯の内側には大蛇がうずくまっていた。
パルテノン (新字新仮名) / 野上豊一郎(著)
しかしどんなに忍ばせてもやはり、空家の森閑とした中には、荒々しく反響する、——ホームズは壁のそばに、這い寄ったので、私も彼に従って、壁の側に寄ってうずくまった。
「追跡隊はどうしたのだ。——うん、あすこの線路下にうずくまっている一隊にたずねてみよう」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それからその姿は、ちょっとの間立ち止まったが、やがてまたうずくまった這う形になって、威嚇するような姿勢で、室の中に入って来た。もう吾々の直前三ヤードのところである。
弾薬函だんやくばこそばうずくまっている兵士の群は、声のする鉄塔を見上げた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)