墨客ぼっかく)” の例文
それから濹字が再びあまねく文人墨客ぼっかくの間に用いられるようになったが、柳北の死後に至って、いつともなく見馴れぬ字となった。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
世の文人ぶんじん墨客ぼっかく多くこれらの地に到り佳句を得ざるを嘆ずる者比々ひひこれなり。これけだし美術文学を解せざるの致す所か。富士山の形は一般の場合において美術的ならず。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
忠兵衛は詩文書画を善くして、多く文人墨客ぼっかくまじわり、財をててこれが保護者となった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
松島には、それがありません。人間の歴史と隔絶されています。文人、墨客ぼっかくこれを犯す事が出来ません。天才芭蕉も、この松島を詩にする事が出来なかったそうじゃありませんか。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)