鰥夫やもめ)” の例文
鰥夫やもめ暮しのどんなわびしいときでも、苦しいときでも、柳の葉に尾鰭おひれの生えたようなあの小魚は、妙にわしに食いもの以上の馴染なじみになってしまった
家霊 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それはその町に一人の鰥夫やもめの肺病患者があって、その男は病気が重ったままほとんど手当をする人もなく、一軒のあばら家に捨て置かれてあったのであるが
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
最も深い絶対的な意味において、言わば墳墓の壁によってすべてのものからへだてられて、ジャン・ヴァルジャンは鰥夫やもめであり、コゼットは孤児であった。
そして右側に黒子のある人はたいへん幸運なんだそうだよ。きみもいつまでも鰥夫やもめでいずに、今度は幸運の黒子のある若い女でも探し当てて再婚してはどうかね
幸運の黒子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
嘉門の女房は数年の前に死んで、今は嘉門は鰥夫やもめであった。子供はお菊一人しかない。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)