馳寄かけよ)” の例文
『あれ、瀬川先生。』と省吾は嬉しさうに馳寄かけよつて、『まあ、魂消たまげた——それでも先生の早かつたこと。私はまだ/\容易に帰りなさらないかと思ひやしたよ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
泉原は素早く馳寄かけよって女のいましめを解いた。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
新平民の仙太と見て、他の生徒が其側へ馳寄かけよつて、無理無体に手に持つ打球板ラッケットを奪ひ取らうとする。仙太は堅く握つたまゝ、そんな無法なことがあるものかといふ顔付。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
自分で自分を思いやると、急に胸が込上げて来て、涙は醜い顔を流れるのでした。やがて、思いついたように馬の傍へ馳寄かけよって、力任せに手綱を引手繰ひったくりましたんです。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お雪は馳寄かけよって
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)