飜然ほんぜん)” の例文
新字:翻然
蟹の長男は父の没後、新聞雑誌の用語を使うと、「飜然ほんぜんと心を改めた。」今は何でもある株屋の番頭か何かしていると云う。
猿蟹合戦 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
以前は自分もよく彼に馴染なじんで、無二の親友であつたのだが今云ふ如く自分の反對黨のために推されて、その旗頭の地位に立つに及び小膽者の自分は飜然ほんぜんとして彼を忌み憎み
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
或は飜然ほんぜん悔悟かいごして、和製女ヴィドックとなるか。それとも又、江川蘭子は忽然姿を消し去って、全く別の人物が舞台を占領するか。凡て凡て、この作者は何も知らないのである。
江川蘭子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かつては淺草で左官をして居た彦兵衞、飮む、打つの道樂がかうじて、一時は巾着切の仲間にまで身を落しましたが、今から五年前、別れてゐた女房の末期のいさめに、飜然ほんぜんとして本心に立ちかへ
と畳みかけてなじる。こゝにアルマンは飜然ほんぜんとして夢から覚めた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)