風俗みなり)” の例文
その時衣摺れの音がして、すぐに一方の襖が開いたが、その風俗みなりで大概わかる、どうやら品子の乳母らしい、四十ぐらいの女が現われた。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あら、よし子さんじゃいらッしゃいませんか。」と同じ年頃としごろ、同じような風俗みなりの同じような丸髷が声をかけた。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
えんな町娘の風俗みなりに、いつかの筆幸の棟上げに出した祝儀の手拭を吹き流しにくわえたお妙だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一体、東京から来る医者を見ると、いずれも役者のように風俗みなりを作っておりますが、さて男振おとこぶりいいという人も有ません。然し、この歯医者ばかりは、私も風采ようすが好と思いましたのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
橋本のしゅうとめが寝物語に、男の機嫌きげんの取りようなぞを聞かされて、それにまた初心らしく耳傾けたことは、夢のように成った。相場師の妻らしく粧おうとして、自然と彼女は風俗みなりをもつくった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)