音譜おんぷ)” の例文
そっちの方から、もずが、まるで音譜おんぷをばらばらにしてふりまいたようにんで来て、みんな一度いちどに、ぎんのすすきのにとまりました。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
沙翁劇さおうげきを看んとせば英文学の予備知識なからざるべからず。ワグネルを解すべき最上の捷路しょうろは手づからピアノを弾じて音譜おんぷを知る事なるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかし、ただきれぎれの音譜おんぷしか、わたしの光は照らすことができませんでした。その大部分は、わたしにとってはいつまでも暗闇くらやみの中に残されることでしょう。
やがて誰やらクド/\言う様子であったが、音譜おんぷの中には聞き覚えのない肉声が高々と響き出した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのあくる日、かれは小さく木を切って文字を作ったと同様に音譜おんぷをこしらえた。
彼が、陣中でよくことを弾じていたということから「琴経きんきょう」という琴の沿革や七絃の音譜おんぷを書いた本も残されている。真偽は知らないが、孔明が多趣味な風流子であったことは事実に近いようである。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
整えてかかる必要があるのでひと通りけるようになるまでが容易でなく独稽古ひとりげいこには最も不向きであるいわんや音譜おんぷのない時代においてをや師匠についても琴は三月三味線は三年と普通ふつうに云われる。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おおこまどり、鳴いて行く鳴いて行く、音譜おんぷのようにんで行きます。赤い上着うわぎでどこまで今日はかけて行くの。いいねえ、ほんとうに
イーハトーボ農学校の春 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
石はその半分も行きませんでしたが、百舌はにわかにがあっと鳴って、まるで音譜おんぷをばらまきにしたように飛びあがりました。
鳥をとるやなぎ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)