雷神かみなり)” の例文
而も甚だ至狭なりしを以て、同寺境内仁王門前に於て、別に茶屋地を添へて給与す、即ち本町也。里俗雷神かみなり門前広小路と云ふ。”
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
窓から眺めやると、凄まじい雷光いなびかりが、雲を斬り、野面のづらをはためき、それに眼をふさぐ瞬間——思わず手は耳へ行って、五体に雷神かみなりのひびきを聞くのであった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お萩はまさか雷神かみなりに打たれて死んだわけじゃあるめえ。何んかこう証拠らしいものを掴めないものかな」
松明たいまつを燃やさっしゃる。その燃え残りを頂くとたい。……これから夏になると雷神かみなりが鳴ります。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
と、いきなり段の口へ、青天の雷神かみなりめったように這身はいみで大きな頭を出したのは、虎の皮でない、木綿越中の素裸すっぱだか——ちょっと今時の夫人、令嬢がたのために註しよう——唄に……
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時にこれを火鉢にくすべると雷神かみなり様が落ちさっしゃれんちうてなあ……梅津の爺さんは身体からだばっかり大きいヘコヒキ(褌引き……臆病者の意)じゃけに雷神かみなり様が嫌いでなあ。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)