学円 今朝から難行苦行なんぎょうくぎょうていで、暑さに八九里悩みましたが——可恐おそろしい事には、水らしい水というのを、ここに来てはじめて見ました。これは清水と見えます。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうしてこの一瞬の光耀を作り出すためには、彼の大力量をもってしても、なお永い難行苦行なんぎょうくぎょうを必要とした。ここに最も個性的な、また最も神秘的な、不可説の瞬間がある。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
奇麗にさらってしまって、井筒にもたれ、井底せいてい深く二つ三つの涌き口から潺々せんせん清水しみずの湧く音を聴いた時、最早もう水汲みの難行苦行なんぎょうくぎょうあとになったことを、うれしくもまた残惜しくも思った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかも、クロはこの難行苦行なんぎょうくぎょうにもくっする色なく、なおとぶことは稲妻いなずまよりもはやい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
霊のために肉をしいたげたり、道のためにたいむちうったりしたいわゆる難行苦行なんぎょうくぎょうの人を指すのです。Kは私に、彼がどのくらいそのために苦しんでいるかわからないのが、いかにも残念だと明言しました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)