鏡花きょうか)” の例文
鏡花きょうかもどきに池の鯉がさかんにはねている。味噌湯をすする私の頭には、さだめし大きな耳でも生えていよう……。狂人になりそうだ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
例えば鏡花きょうか氏が紅葉山人こうようさんじんの書生であったような形式をとるか、ドストエフスキイ式に水と米、ベリンスキイが現われるまで待つか、なにかしたいと思っています。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
鏡花きょうかの小説は死んではいない。少くとも東京の魚河岸には、いまだにあの通りの事件も起るのである。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
紅葉門下の風葉ふうよう鏡花きょうか徐々そろそろ流行児はやりっことなり掛けた頃には硯友社の勢力は最早峠の絶頂を越していた。
秋声老人は、「僕は実は紅葉よりも露伴ろはんを尊敬していたのだが、露伴が恐ろしかったので紅葉の門に這入はいったのだ」といっていたが、同じ紅葉門下でも、その点鏡花きょうかは秋声と全く違う。
文壇昔ばなし (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
月の光を切々とすくう鰌すくいの端厳たんごんさはかつての鏡花きょうか散人も見たものだ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
いたずらに空華くうげと云い鏡花きょうかと云う。真如しんにょの実相とは、世にれられぬ畸形きけいの徒が、容れられぬうらみを、黒※郷裏こくてんきょうりに晴らすための妄想もうぞうである。盲人はかなえでる。色が見えねばこそ形がきわめたくなる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひどいねえ。矢庭やにわにこの写真を、破って棄てたい発作にとらわれるのだが、でも、それは卑怯ひきょうだ。私の過去には、こんな姿も、たしかにあったのだ。鏡花きょうかの悪影響かも知れない。笑って下さい。
小さいアルバム (新字新仮名) / 太宰治(著)
「姉さん。何とか云う鏡花きょうかの小説に、猫のような顔をした赤帽が出るのがあったでしょう。わたしが妙な目にったのは、あれを読んでいたせいかも知れないわね。」——千枝子はその頃僕のさい
妙な話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ほんとうは、鏡花きょうかをひそかに、最も愛読していた。
ろまん灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)