野趣やしゆ)” の例文
それから長命寺の桜餅は、——勿論今でも昔のやうに評判のいことは確かである。しかしあんや皮にあつた野趣やしゆだけはいつか失はれてしまつた。……
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
精々二十歳そこ/\でせうか、まだ世馴れない樣子のうちに、妙に野趣やしゆを帶びた、荒々しさのある人柄です。
て、たびといへば、うちにゐて、哲理てつりをかぼれのことにばかりつてゐないで、たまにはそとたがよい。よしきり(よしはらすゞめ、行々子ぎやう/\し)は、むぎ蒼空おほぞら雲雀ひばりより、野趣やしゆ横溢わういつしてしたしみがある。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次と八五郎は、この野趣やしゆ滿々たる若者——丈夫さうで正直さうな男に案内されて、大きな百姓家を一と廻り、裏の木立を拔けて、見晴しの良い西側へ出ました。