野猪やちょ)” の例文
これも熊野の山中において、白い姿をした女が野猪やちょの群を追いかけて、出てくることがあると、『秉穂録へいすいろく』という本に見えている。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
匹夫はまだ、生命いのちの貴きを知っている。貴下のごときは、生命知らずの野猪やちょに過ぎん。——この城にしがみついて、あと幾日の生命をたもちうるとお思いあるか。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南向いている豚の尻をむちでたたけば南へ駆け出し、北向いている野猪やちょをひっぱたけば北へ向いて突進する。
電車と風呂 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
近藤勇は野猪やちょのような男である。感情に走りやすく、意気にじゅんじやすい代りに、事がわかれば敵も味方もなくカラリとれる、その剣の荒いこと無類、術よりは気を以て勝つ。
すると、そのとき不意に、男の背後へ襲って来た野猪やちょのごとき者があった。何か、吠えたと思うと、二つの体は、早や組み合い、猛烈な勢いで、格闘していた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この「山火事と野猪やちょ」の詩や
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
武蔵が、不意に、山裾から里へ向って、野猪やちょのように駈け出したからである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「真の曹将軍は、貴様ごとき野猪やちょの化け物と勝負はなさらない。覚悟しろ」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)