僕の青磁せいじ硯屏けんびやう団子坂だんござか骨董屋こつとうやで買つたものである。もつとも進んで買つたわけではない。僕はいつかこの硯屏のことを「野人生計事やじんせいけいのこと」といふ随筆の中に書いて置いた。それをちよつと摘録てきろくすれば——
身のまはり (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)