鄙吝ひりん)” の例文
自から労して自からくらい、人の自由を妨げずして我が自由を達し、脩徳開智、鄙吝ひりんの心を却掃きゃくそうし、家内安全、天下富強の趣意を了解せらるべし。
中津留別の書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
鄙吝ひりんでもあったろうが、鄙吝よりは下女風情に甘くめられてはというむずかし屋の理窟屋の腹の虫が承知しないのだ。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
世には大なる福分を有しながら慳貪けんどん鄙吝ひりんの性癖のために、少しも分福の行爲に出でないで、憂は他人に分つとも、好い事は一人で占めようといふが如き人物もある。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
自分の父が鄙吝ひりんらしく彼女の眼に映りはしまいかという掛念けねん、あるいは自分の予期以下に彼女が父の財力を見縊みくびりはしまいかという恐れ、二つのものが原因になって
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
以てあなたの人格の下等さがわかるではないか。——手紙はかう云ふ文句ではじまつて、先輩として後輩を食客に置かないのは、鄙吝ひりんの為す所だと云ふ攻撃で、僅に局を結んでゐる。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
手紙はこういう文句ではじまって、先輩として後輩を食客に置かないのは、鄙吝ひりんのなすところだという攻撃で、わずかに局を結んでいる。馬琴は腹が立ったから、すぐに返事を書いた。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)