この歌で、五十三次の宿を覚えて、お前たち、あの道中双六どうちゅうすごろくというものを遊んでみないか。あがりは京都だ。姉の御殿に近い。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「夜通しあるいていたようなものだね」と東風君が気の毒そうに云うと「やっと上がった。やれやれ長い道中双六どうちゅうすごろくだ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
近松の『道中双六どうちゅうすごろく』に在る馬方三吉うまかたさんきちの情婦の父は年貢の滞りで水牢みずろう這入はいっているとある、何だかそういう聯想も何処やら在るような心持がするのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
古いころの双六は今ある一枚刷いちまいずりの道中双六どうちゅうすごろくなどとはちがって、将棋しょうぎと同じようなばんの上の競技であった。そうしてその遊びをすることを打つといっていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
往来をあおいで招くが、道幅の狭い処へ、道中双六どうちゅうすごろくで見覚えの旅の人の姿が小さいから、吹飛ばされそうです。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今も、道中双六どうちゅうすごろくをして遊ぶのに、五十三次の一枚絵さえ手許てもとにはなかったのだ。絵もとうとい。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)