速歩はやあし)” の例文
黄昏、時々お饒舌しゃべりな雲が速歩はやあしで窓を通つて行くのですが、私の胃の腑にも柔かな饒舌が其の時うとうとと居睡りに耽つてゐるのです。
帆影 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
法水は、しばらく雑談している三人から離れて、俯向うつむきながら歩いていたが、やがて速歩はやあしに追いつくと、ウルリーケにいった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
誠に上古のギリシャ人は殆んど素足に近き恰好で、獣類の速歩はやあし、普通駈歩かけあし伸暢駈歩ギャロップと同じ体形で体を動かしていた。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
百五十年ほど前に三州豊橋の町で、深夜に素裸すっぱだかではだしの大男が、東海道を東に向って走るのを見た者がある。非常な速歩はやあしで朝日のがるころには、もう浜名湖の向うまで往っていた。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)