越年おつねん)” の例文
人は二十日はつか足らずの目のさきに春を控えた。いちに生きるものは、忙しからんとしている。越年おつねんはかりごとは貧者のこうべに落ちた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
身寄りのない雪の北海道で「越年おつねん」するために、自分の身体を手鼻位の値で「売らなければならない」——彼等はそれを何度繰りかえしても、出来の悪い子供のように
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
小生旧冬より肥後小天(?)と申す温泉に入浴、同所にて越年おつねんいたし候。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「無論です、野郎ばかり五人揃って、越年おつねんをしようというんです」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)