かが)” の例文
「私の生涯はそれでも決して空しくはなかった——」女はそんな具合に目をかがやかせながら、ときどき京の方を振り向いていた。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
しかし兎に角大体としては大音楽家の威厳を保ちながら、細い目を凄まじくかがやかせてゐました。僕は——僕も勿論危険を避ける為にトツクを小楯にとつてゐたものです。
河童 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
加賀国の加賀などは建置以前は郡名であり、またその前には郷名・里名であったろうのに、『諸国名義抄』には、『日本紀略』に以地広人多也とあるを思えば、かがの国なるべし。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そのお方にぜひとも逢わせて下さい。」息子は再び目を異様にかがやかせながら、田舎者らしい率直さで言った。
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そうしていつか私達の眼界から遠ざかっていた八つが岳が、又、ちょうどその橋の真上に、白じろとかがいていた。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そんなうつろな気もちでいるときでも、この雪の野を赤あかとかがやかせながら山のかなたに落ちてゆこうとしている日を眺めると、急に身も心もしまるような気がするのだ。
雪の上の足跡 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それから何日かの後、郡司の息子が異様に目をかがやかせながら言った。
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)