象徴しるし)” の例文
本来は支那の——この国のもっとも尊い色であるはずの黄土の国色も、今は、善良な民の眼をふるえ上がらせる、悪鬼の象徴しるしになっていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佐保子さほこ昨日きのふまでに変つての兄弟からまれて孤独になつた象徴しるしであるらしいと台所で女中に云つて聞かせたりもおつやさんはなさいました。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
彼女は私の過去の生命の象徴しるしのやうに思はれた。そして今私が會ひに行く爲めに身を飾らうとしてゐる彼は、私の知らざる未來の日の不安な、しかし憧憬しようけいの表象である。
どうかすると、丑松は自分の日和下駄の歯で、乾いた土の上に何かき初める。蓮太郎は柱に倚凭よりかゝり乍ら、何の文字とも象徴しるしとも解らないやうなものが土の上に画かれるのを眺め入つて居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
永遠の平和の象徴しるしであることを。
大大阪のれいめい (新字新仮名) / 安西冬衛(著)
全軍の護っている中心の象徴しるしに、自分の一撃を下しておきさえすれば、たとえ、自分があの際、斬り死にしても、後に、自分の勝利は証拠だてられる
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)